半村良の戦後を舞台とした大河ロマン。

 このなかで、晴れた空 半村 良 534頁
「だから戦争に負けた今、二度と同じことが起こらないように、その最大の要因を否定したんですよ。現御神……自分は生きながらの神などではないし、日本は神州でもなければ不滅の国でもないとね。奥さん、自分は一晩中、色々考えた。結論は、彼が勇気のある人だということです。戦争に敗けたら、一歩前へ出て国民に堂々と間違っていた点を教えている。そして、やり直そうと国民を励ましている。立派なことだ。それを生き続けてやり直そうというんだ。なみの度胸じゃない。やはり天皇だけのことはありますね。」
 昭和天皇に対する作者の史観が凄くいい。戦争に負けた責任を、切腹ではなく、国民を助るために尽くした道を歩む昭和天皇に対する勇気を讃えていた。最近仕事で失敗した自分にとって、失敗してもそれを乗り越ろと励まされているようで、感動した。
 
 物語では、特攻クズレの前田が物凄くカッコいい。進駐軍と戦うつつもりでありったけの拳銃を持って東京に来たが、それも果たせず、自暴自棄になっていながら、ヤクザに連れ去れた子連れの未亡人を助けるシーンはカッコが良すぎです。鉄砲を打つシーンで、バンバンと適校に効果音をつけているのかと思ったら、弾の数が、伏線になっていて面白かった。