軍靴のバルツァー3巻感想
- 作者: 中島三千恒
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/07/09
- メディア: コミック
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自分の係る分野の話になるが,日本の土木技術は世界一だといわれているものの,海外でのプラント等の受注は,日本よりも実は韓国の方が多いわけで,日本の土建業はあまり海外に進出していない。それは,日本が地震大国でさらに,地盤がとても弱い特殊な地域であるため,土木技術が独自の発展を遂げ,世界の標準規格とはことなる日本の規格を作ってしまっためである。規格の違いが日本の海外進出を遅らせている。日本の土木業界が田舎の中小企業が中心で,中小企業の経営者が地元の政治屋と結びついて公共事業で稼ぐことばかり考えて,海外展開を考えてないことも原因だろうけど。
近年では,大手ゼネコンが海外進出に積極的であるが,海外と日本国内とでの仕事のやりかたが違うため苦戦しているようである。最近,大手住宅メーカーの社長さんが,発展著しいアジア市場にどうやって日本の土木技術の規格を輸出をするのかについての記事を雑誌に投稿していた。とりあえず,中国で市場を開拓することが,東南アジアへ進出する足掛かりになると書いてあった。その中で,日本独自に発展した調査方法,例えばサウンディング試験(土の中に突っ込んだドリルを回して,土の締り具合を調べる試験で,戸建住宅の基礎となる地盤の強さを調べる試験)を中国に輸出して,日本独自の土木試験の規格を輸出することが,その後の仕事のやり方の規格の輸出,ひいては日本の土木技術の輸出につながるって書いてあった。形のない規格といった概念的なものを輸出して,見えないところから他国の市場を侵食して,その後,物質的なもので市場を独占しようとする考えかたが凄い。
軍靴のパルツァーでは,直接軍事力に見えにく鉄道規格の輸出により,国民感情を逆なでせずに徐々に属国化していくのは,架空軍事小説ではべたな話かもしれないけど,面白かった。
現実の歴史で規格の話だと銃弾が面白いと思う。この辺りを突っ込んで描いてくれないかな?