特攻の島2巻感想

太平洋戦争末期、日本軍は、魚雷による特攻を目的として回転をを開発した。誘導装置として人間を組み込んだ誘導魚雷である。この兵器を見て、”オネアミスの翼”にでてくるグノーム博士の「お前はこの宇宙船の中で最高に高級品の一つだ」って言葉を思い出す。但し、人を乗せる目的が大きく違っている。片や、人類初の有人宇宙飛行を、片や体当たりによる特攻である。
 当時の特攻隊員は、特攻作戦が馬鹿げているが、少しでも敵戦力を削ることで、自分の家族、国が救えるのではないかと思い散っていったと思う。死ぬ事が強要される中で、自分の死にどんな意味があるかと考えた時に、自分の死が、日本のため、家族のためと納得するしかなかったと、私は思う。しかし、これは物凄く現代的な考えかもしれない。
 現実には、志願して特攻した者もおり、当時の若者の考え方は、残された遺書とうから断片的にしかする事ができない。実際、いま私自身が、特攻を命じられたらどう思うだろうか?そういった問題に切り込んだがのこの作品だと思う。作者は、当時の状況をよく調べ、今の若者的な感覚で、戦争で死ぬことについてよく考え、勉強していると思う。そのため、連載のペースが物凄く遅いのが残念である。
 この作品の特徴は、主人公を太平洋戦争末期の特攻隊として現代的な若者を当てはめている点である。そういった意味では作者は、戦後の戦争を知らない世代に、戦争の悲惨さや、国のために戦った人々の気持を感じさせようとしているのではないかと思う。そういった意味で、主人公は効果的に機能している。
  前半は、特攻に赴く先輩が華々しく描かれる。人間魚雷”回天”に乗るまでのシーンでは、多くの軍人に囲まれ、華々しく勇壮な雰囲気で、先輩はまるで英雄にように描かれている。それを見守る主人公は、先輩が、何のために死ににいくのか疑問をもっている。
 後半は、その答えをずっと探し続け、後半部分では、この回天による自爆攻撃により家族が助かるかもしれないと無理矢理納得する。
 
 佐藤さんの劇画調の緻密な絵は臨場感があり、回天を見送る、多くの隊員が懸命に帽子を振り、泣いているシーンは熱気が伝わってくる。それに対して、軍刀で返礼する先輩の姿は、中二病をくすぐる。
 後半部の心の葛藤や同僚の心の告白するシーンには、やはり、死ににいくことに対する深い苦悩が表現されているすきである。主人公はそれに対して、一応答えらしきものを見つけて、出撃するが、果たしてその後どうなるのか、3巻以降が楽しみです。

坂口(同僚)「オレが死んだ後に…
       オレの言葉を家族に残そうと思ったんだ…
       だけど…
       何を書いていいのか 分からないんだ…  
       オレは家族を守るためなら死んでもかまわない…
       この作戦がたとえどんなにバカげていようと
       オレの命で親父(おやじ)や
       お袋が助かるのなら喜んで死ぬ…
       だけどもしもそうじゃないのなら…
       どんな言葉を残していいのか分からないんだ…
       
       オレは…
       何のために死ねばいいんだ…?
       何のために生きているんだ…?
       なんで産まれてきたんだ…?
       何で死ぬことになったんだ…!?

この発言は、特攻に行く人の心情をよく表しているのではないかと思う。当時の特攻隊員達もこんな疑問を抱きながら死んでいったのかと思うのいたたまれなくなる思いでした。
 「〜角田和男氏(元海軍中尉)の回想〜」を読むと一層そう思う。そういった意味では、今の日本のために散って行った若者たちが居ると思うと、今をもっと懸命に生きなければと…

余談だが、本作は、同じ特攻兵器の話で、桜花を題材にした松本零士作の「ザ・コックピット」とは、全然話の雰囲気が違う。あっちは、悲愴的な話であるが、登場人物があっけらかんとしている。これは、作者の性格の違いなのかな。



D


特攻の島 2 (芳文社コミックス)

特攻の島 2 (芳文社コミックス)